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 11月末から12月の初めにかけて、自宅を引っ越した。前回の引っ越しは約9年前のこと。実家以外で一つの場所にそんなに長く住んだことはなかったから、感傷でさぞ胸が詰まるだろうと思いきや、そんなこともなく粛々と事は運んだ。自宅とは別の場所に借りている事務所の備品も一旦新居に移し、当面は自宅がメインの仕事場になる。4月から旧事務所の近くに小さな拠点を設ける計画もあるので、本格的な変化は年が明けてからになるが、まあとにかくこれで一区切り、である。

 今年は、病気のこともあって決して順風満帆とは言えなかったが、一年を通して人との出会いや優しさに何度も助けられた。実際振り返ってみると例年以上に幸せな、そして特別な一年だったように思う。失われた物も幾らかあったが、いつかまた戻ってくるだろう。体調は完全に回復した。来年は再起の年になる。ウルトラマンの小旗があちこちではためき、大きな公園のある、賑やかで人の優しい街で。シュワッチ!

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大人の、大人による、大人のための音楽

Welcome

 チラシや新聞広告の仕事がきっかけで聴いた五輪真弓さんの最新アルバム『Welcome』があまりに良かったので、クライアントにお願いして、開催中のコンサートツアー“2007 Welcome home”を観させてもらうことができた。

 五輪さんといえば、ぼくがまだ中学生だった頃のヒット曲「恋人よ」が懐かしい。失礼ながら五輪さんに関するぼくの記憶もそこで止まったままだったが、今回聴いた『Welcome』は、オリジナル・アルバムとしては11年10カ月振りというブランクを感じさせないみずみずしさにあふれていた。林立夫さんや井上鑑さんをゲストに迎えた極上のセルフ・カヴァーと新曲、美空ひばり「愛燦燦」やルイ・アームストロング「What a wonderful world」のカヴァーなど。深みとハリのある声はどことなくUAに似ていて、若い音楽ファンにも十分アピールしそうだ。SACD録音であることも自宅のステレオ的にはポイントが高い。とにかくここ数日、家では五輪さんの歌声がヘビー・ローテーション状態だった。

 会場の東京国際フォーラムホールCは、団塊世代からその上ぐらいの世代の人々であふれていた。若い音楽ファンはほとんど皆無に近かった。おそらく若い頃に彼女のことを知った同年代のファンが多いのだろう。音楽のマーケットが既に、若年層だけではなく、様々な世代や用途向けに細分化されていることを実感した。ひとつの音楽を世代を超えて多くの人々の耳に届けることは、いまの音楽状況においてはきわめて困難なことに違いない。ロックでもアイドル・ポップスでも演歌でもどんなジャンルでも、目の前に小さく広がる世界が、それぞれのリスナーにとって音楽をめぐる風景のすべてとみなされるような状況(いわゆるタコツボ化状況)の中では、網羅的/ボーダレスに音楽を届けていくことも、逆に聴くことも難しい。できることはといえばこの日の五輪さんのように、自分の信じる音楽を目の前にいる人々に向けて、丁寧に地道に伝えていくしかない。ほんとうにステキな歌声だった!

 昔は中高年世代の音楽といえば演歌や民謡だったが、いまではずいぶん様変わりしたように思える。ぼく自身もそちらの世代に差し掛かりつつあるからわかるが、たとえば今年に入ってからの桑田佳祐の2枚のシングルは、妙に心にしみる大人の味わいがあって何度も繰り返し聴いた。過去に関わった人々では、最近のヒートウェイヴ山口洋さんの作品や、ドラマー林立夫さんのコンピレーション『Non Vintage』あたりもそんな感じがする。大人が聴くための音楽を、手を抜かずに心を込めて創りそしてきちんと届ける仕事は、これからますます増えていくに違いない。そんな仕事があれば積極的に関わっていきたいと思う。

ピット・イン

ピット・イン

 同世代の仲間で今年、健康上の理由により休みを余儀なくされたという人が少なくない。ぼくもご多分にもれず、今年の初夏に短期間だが胃腸系の病気で初めての入院を経験した。幸い手術の必要もなくすぐに退院できたが、精神的なショックが大きく、健康とも不健康ともいえないような不調がしばらく尾を引いた。それまでは休まずに働けるのが唯一のとりえといっていいくらい、自分のことを健康体だと信じて疑わなかった。原因は直近の仕事の過密によるストレスだったが、実際のところ、健康という幻想に寄りかかって不規則な生活や暴飲暴食など無理を続けてきた十年分ほどのツケが、ここにきて一気にのしかかったのではないか。

 世間一般の目から見れば、不運な、お払いでもしたくなるような時期ということになるのだろう。しかしぼくにはそれが不幸な出来事にはどうしても思えなかった。不規則だった生活習慣は病気を境に、入院生活と同じ朝型に改まり、食事も簡単だが三食きちんと食べるようになった。休養を兼ねて自宅で仕事を始めるようになってからテレビを観る時間が格段に増え、夜7時台のバラエティやお笑い番組に夢中になった。そんな時間に家にいるなんて以前はありえなかった。人生の中心軸が仕事から家庭にシフトし、ただ現在を楽しむだけでなく、未来のことを考える余裕が生まれてきた。病気に直面したとき、クライアントや仲間たちが仕事よりぼくの体のことを優先して、スケジュールを融通してくれたり温かい言葉をかけてくれたのも本当に有難いことだった。

 休むことは活動の対極にあり、ネガティブなことだとずっと思っていた。カーレースには「ピット・イン」と呼ばれる調整のための小休止があって、一見他の車に遅れをとるようにみえるこの時間をきちんと取ることが、最終的なタイムの向上に大いにつながるのだという。長い人生、いくら頑張ってもどうにもならない時期というのがあるものだ。次の機会に備えてひたすら待つ、あるいはのんびり休むことだって、元気に活動するのと同じくらいの価値があるといまは思っている。最後に、そのことを説得力ある言葉でまとめてくれている“人生の先輩”山口洋さんの(少し前の)日記にリンクを貼っておく。「人間の落下を止められるのは愛だけだ」。ぼくも心からそう思う。

>>ROCK’N ROLL DIARY|峰は今日も快晴だ

ぼくの好きな先生

デザイナーなら和田誠。あらゆる意味でお手本。
漫画家だったら松本零士。男はいかに生きるべきか教えてくれた。
音楽家では坂本龍一。勧めてくれた本や音楽を片っ端から背伸びして追いかけた。
もう一人、小西康陽。「編集」について、音楽を通して教わった。
吉本隆明、柄谷行人、竹田青嗣。それまで知らなかった書物の世界への扉を開き、
ぼくの身体に“テクスト”という名の骨格を造ってくれた思想家/批評家たち。
ほかにも、ノーム・チョムスキー、坂口安吾、北野武、大林宣彦、手塚治虫……。
そして岸田秀と、河合隼雄。
かつてこころが少し疲れそうになったとき、二人の書物を足がかりに臨床心理学や
精神医学の本をいろいろと読み漁ったことがあった。「こころ」は受け皿のように、
それこそ「器」のように、ぼくの奥底のいちばん大事な場所にいつもある。
デザインはいわば屋根で、いつ強風で吹き飛んでしまうかわからないが、
こころは土台で、死ぬまで一緒に付き合っていかなければならない大切な友だ。
そのことを教えてもらったからこそ、いまの自分があるような気がする。

河合先生は、常に高く舞い上がりぴんと緊張しがちな日本人のこころの凧糸を、
あそび(余裕)が生まれるよう、反対方向にゆる〜くひっぱってくれていた。
その糸が急にはじけて、いまちょっと痛い。ご冥福を祈ります。

>>http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070719-00000920-san-soci

井戸の底から

井戸の底から先週末帰還しました(これは暗号です)。
少し貧血気味だけど、もうすっかり元気です。
村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』(1〜3)を熱心に読み耽っていました。

井戸の底(2007)

とても元気が出たこと…1
Kiiiiiiiの1st album『AL&BUM』ジャケット・アートワーク完成(中味もたぶ〜んすごい)。
とても元気が出たこと…2
ヒートウェイヴ山口洋氏が関わる、日本の音楽/文化の今後を左右する重要な裁判の話。

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