マユミンウォークとDigital Decay 



これまでに紹介した書体は、[FONT>書体見本]カテゴリーでご覧ください。


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久々に出かけた青山ブックセンター六本木店で「日々」という雑誌を見つけた。
アトリエ・ヴィという編集プロダクションが発行元で、ごく限られたお店でしか販売されていないミニコミ。雑誌としての雰囲気は、大橋歩さんの「Arne」に少し似ている。内容は、このところブームの「器」の特集など。
全体のレイアウトと、何より使われている書体の美しさに目を引かれて、すぐに購入した。
気になる書体が使われているのを見ると、必ずネットを使ってそれが何の書体か調べることにしている。「和文フォント大図鑑」を小一時間ほど見て、特徴のある字体を目印に探してみたら、本文で使われているのが日活明朝体という書体だとわかった。メーカーのHP(2000年頃から放置状態…)で調べると、Mac用のフォントはもう販売されていないようだ。ではWindowsDTPで作ったのだろうか。
不思議に思って、ページをめくりながらじっくり見回してみた。それにしても墨版のインクがやけによく乗っているなと思いながら「あれ?」と思ってふと裏面を見ると、裏面が文字の形に盛り上がっていた。やはり活版印刷だった。本物の活字を使っているのか、DTPで擬似的に活版を作っているのか、まだ断定はできないけど、ユニークだなと思った。デジタルの時代に、デジタルと手をつなぎながらデジタルの逆をいくような試みにはシンパシーを感じてしまう。とにかく日活書体カワイイ。微妙に字形や字詰めが揃っていないところも好きだ。キャプション等で使われている細いゴシック体もカワイイ。また今度調べよう。
表紙で使われている『となり町戦争』の題字とおぼしき書体もカワイイ。探してみよう。
高いので特集により時々買うデザイン雑誌『アイデア』の5月号は、「大特集:日本のタイポグラフィ1995-2005」。55人のデザイナーによるエディトリアル・デザインの仕事(書籍を中心に、雑誌、宣伝物など)が一冊まるごと使って紹介されている。鈴木成一、立花文穂、葛西薫、祖父江慎、中島英樹、服部一成、菊地信義、仲條正義など、日本を代表するデザイナー・装幀家たちが名を連ねている。紹介された作品の多くに使用書体がクレジットされているのがとても役に立つ。
「1995-2005」という区切りがまた絶妙。この十年は、組版が写植オンリーからDTPへと移行していく変わり目の時期だったから。特集の巻末にまとめられたデザイナーの略歴とコメントの中で、アジール・デザインの佐藤直樹さんが、この十年の面白い動きとしてThe Designers Republic(DR)と丸明オールドを上げていたのが印象的だった。
佐藤さんのコメントをヒントにして、日本でのタイポグラフィの十年を大ざっぱに前半後半に分けてみた。前半五年は、Macが普及してDTPの地盤が作られていく一方、コンピュータなしではありえない新しい発想によるタイポグラフィやグラフィックのムーブメントが巻き起こった時期(DRやtomatoとフォロワーたち、日英のフォントブーム…)。そして後半五年は、欣喜堂“和字書体シリーズ”や片岡朗さんの“丸明オールド”(エイワン)など、明治期の書体の再発見により作られた新しいデジタルフォント(写植ではない)が次々と登場した時期。まあ、音楽にたとえれば、前半がヒップホップ/テクノで、後半がレアグルーヴか。
前半に対応しているデザイナーは、中島英樹、佐藤直樹、稲葉英樹(樹×3)、後半に対応しているのが、鈴木成一、有山達也、浅葉克己……(活躍の時期とは無関係)。鈴木さんは、写植オンリーに近い装幀の世界に積極的にDTPを取り入れてきた人。2002年に出た宮沢和史/中川正子の写真集『旅の響き』でもいち早く丸明オールドを全面的に使っていた。そして写植の象徴みたいな存在だった浅葉さんまでもが、丸明オールドをひっさげてデジタルの世界へ…。ようやくデジタルでも写植に比肩するような(というよりデジタルならではの)組版表現が可能になってきた、というのが2005年現在の状況だろう。
ここ数カ月、フォントや組版にとても興味を持っていろいろ調べていく中で、今まで自分のやってきたことは何だったんだと思えてしまうようなことに何度も遭遇してしまった(ま、常にその連続なんだけど……今回は特に)。一時期はWebデザインの世界に行ってみようとか半ば本気で考えていたけど、それはそれとして今は紙の世界でまだまだやれることがあるし、やっていくべきだと強く感じている。
