展覧会日和[2009・11〜12月] このエントリをTwitterに追加このエントリをはてなブックマークに追加

11月×日

 北村範史さんの展示第三弾(FRAMeWORKの球根展も含めると4回目)「窓」を観に、水道橋の食堂アンチヘブリンガンへ。内装もさりげなく置かれた小物もすべてが洒落ている店内で、飾られた写真や絵の作品が文字通り「窓」のように機能している。別の場所で打ち合わせがあるのでランチを食べてすぐに出ようと思ったら、北村さんが現れたので少し話すことができた。

11月×日

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 新橋のクリエイションギャラリーG8/ガーディアン・ガーデンで、原耕一アートディレクション展「もうちょっとだな」が同時開催されていた。原さんという名字のアートディレクターが何人もいるので混乱しがちだが、原耕一さんはYMOの『BGM』期の雑誌広告、サザンやINU(町田町蔵)のレコードジャケット、サントリーやJTの広告などを手がけた人。会場にも閲覧可能な形で展示されていたサントリーのPR誌『SPIRIT.』からも、80年代特有のむせかえるようないい匂いがぷんぷん漂ってくる。で、すっかり80年代の人だと信じ込んでいたのだがとんでもない、21世紀以降現在もなお、広告など様々な分野で第一線で活躍中なのであった。特に90年代の写真ブーム以降の写真集の仕事では、80年代とはまた違った形で時代を牽引している印象すらあった。過去に関わったたくさんの写真集(これも閲覧可)に起用された写真家の人選が非常に的確で(森山大道、石内都、ホンマタカシ、若木信吾、新しい人では石川直樹、鷹野隆大ほか)、彼と仕事をした写真家は必ず大物になる、みたいなセンサーの役目を果たしているようにも感じられた。第二会場のガーディアンガーデンには、日本専売公社〜JTのたばこ広告やPARCO、YMO、シナロケなどの過去の広告仕事がずらりと。今回も充実しているタイムトンネルシリーズの対談本を買って帰った。

 ギンザ・グラフィック・ギャラリーまで歩いて、北川一成展へ。住み慣れた印刷の世界から離れて、ビジュアル表現の高みを目指そうとする姿勢はわかるのだが、彼のタイポグラフィだけはどうしても馴染むことができない。

11月×日

 1歳の誕生日を境に娘のボキャブラリーが徐々に増えてきて楽しい日々。恵比寿のMA2ギャラリーで、楽しみにしていた藤井保「BIRD SONG」を観る。原研哉、深澤直人との無印良品の仕事などで有名な写真家。渡り鳥の撮影をライフワークにしているのだそうだ。美しい群れの隊形を写し止めた写真と、鳥の羽ばたきを残像のようにとらえた写真、どちらも藤井さん独特の重みのあるモノクロで見ごたえがあった。グルビ×コーネリアスの「WATARIDORI」を思い出す。優雅でタフで、とても切ない。

11月×日

 めったに行かない新中野にある女子美ガレリアニケというギャラリーへ、NNNNY(伊藤ガビンとグラフィックデザイナーいすたえこのユニット)による『NNNNYのデザイン家電の予習復習』を観に行く。以前、結局来日できなかった思想家のフェリックス・ガタリのイベントで、点字+ステンシルの上からスプレーを吹いて作成したフライヤーが彼らの作品だった。今回の展示はそれとはまったく無関係の、デザイン家電の忘れられたプロトタイプともいうべき「家具調コタツ」がテーマ。現在のデザイン家電の方向性(引き算)と家具調コタツのそれ(足し算)は真逆を向いている、ということに気付かせてくれただけでも面白かったというべきか。

11月×日

 乃木坂21_21 DESIGN SIGHTの、「THE OUTLINE 見えていない輪郭」展へ。先日も観た藤井保さんが深澤直人のプロダクトを撮る、というよだれの出そうな展示。藤井さんの写真における対象の切り取り方、深澤さんの徹底的な引き算の末に切り出されたプロダクト、どちらからも学べることがたくさんあった。レタリングで影だけを描いて書体を表すアプローチ(たとえばこんな感じ)が、今回の「輪郭」の考え方に似ていると思った。

11月×日

 藤井→藤井/深澤、と来て、今度は深澤さん単独の展示へ。とはいっても個展ではなく、表参道EYE OF GYREで、深澤直人が主宰するデザインワークショップ「WITHOUT THOUGHT」発表展のVOL.10「箱|BOX」が開かれていた。参加デザイナーが提案するパッケージ(商品/モノを包む箱)が実際に作られ、展示されている。ワンアイデアで笑わせる方向の作品が多い中、關真由美さんという人の「1カットのショートケーキの箱」(ショートケーキ一箱分の箱の内側が鏡になっていて、開くとホールケーキのように見える)が、アイデアと見た目の双方で優れていた。図録を購入。その後、HBギャラリーの網中いづる個展「Once upon a time」のオープニングに向かうも、パーティーの混雑で中にも入れず、あきらめて夜から始まる打ち合わせの場所へと向かった。

11月×日
 忙しさのピークをようやく乗り越え、次の仕事の準備などに少し時間をかけてじっくりと取り組む日々。日本橋の産業技術史資料情報センターという聞き慣れない場所で「ザ・テレビゲーム展 〜その発展を支えたイノベーション〜」(PDF)という興味深い展示が行われていると聞き、早速行くことに。北九州で開かれる「ザ・テレビゲーム展」のプレ展示ということで(そちらも行きたかった…)、狭い会場に、初期のテレビゲームの原型となるオシロスコープを使った機器や、日本からは任天堂のファミコン〜ゲームキューブ、それに対抗するSEGAのマスターシステム〜メガドライブ(←両方持ってた)からNECのPCエンジンまで、レアなゲーム機がずらりと並んでいた。中でも衝撃を受けたのは世界初の商用家庭用ゲーム機「ODYSSEY」。この古いCM映像を見るとわかるように、ODYSSEYは白黒テレビの上に、カラー印刷された透明フィルムをゲームごとに貼り替えてプレイする。それぞれのフィルムがとても可愛いし、家庭用白黒テレビの表現の拙さをカバーするアイデアとしても秀逸。こんな珍しいゲーム機に出会えただけでも幸せだった。

 そのまま少し歩いて、京橋Bartok Galleryの「現代女流絵本作家展」という厳めしい名前のグループ展へ。気になっていた画家さんの絵をまとめて見ることができた。展示作家のひとりであり友人の、市居みかさんは数日前ブログで第一子の妊娠を発表。とても嬉しい。不在だったがお祝いのメッセージを残して会場をあとにした。

 

12月×日

 新宿2丁目。初めて行くPhotographers’ Galleryで野村佐紀子写真展「野村佐紀子展 1」。展示の内容よりも、このギャラリーへ向かうまでの周辺のゲイタウンぶりにたじろぐ(真っ昼間だからまだ良かったが…)。展示自体がこの街の一部であるかのようにすら感じたほどだった。暗闇と、男の裸と。

 気を取り直して、表参道HBギャラリーの「和田誠・挿絵原画 大公開」へ。昔の挿絵原画と、復刻されたモノクロの童話(おさる日記)が何種類か売られていた。迷って結局買わずに出てしまった。

12月×日

 原宿のLAPNET SHIPでMurgraphの個展「3 chords」を観る。Murgraphこと下平晃道くんの、同時期に開かれる個展のひとつで、こちらはイラストレーションサイドの作品が並ぶ。新作はタイトルの通り3色で描いたドローイングで、奥さんでパートナーの多田玲子(Kiiiiiii)が描く3色ボールペンのドローイングに影響されているようでもある。もちろんアウトプットの仕方はそれぞれ異なるけど、本当にこの夫妻は双子のようだ。きれいな多色刷りのZINEと、Tシャツを買って帰る(翌日、同じ展示を妻と娘と三人で観た)。

12月×日

 黒沢健一のアルバム『Focus』でご一緒した嶋本麻利沙さんの新作展「yellow turning gold」を、No.12 GALLERY(東北沢)で。前回の写真展「because there is light」を観て、すぐにアルバムの撮影を依頼したのがちょうど一年前のことだった。緑の木々がやがて紅葉して黄金色に変わるように(『Focus』リミテッド・エディションがお手元にある方は、ブックレットのライブ編直前の写真を参照)……まさに“yellow turning gold”のように時は過ぎ、嶋本さんの写真も黄色く深く色づいていた。というのはもちろんぼくの主観に過ぎないが、もしあの時出会っていたのが今回の写真だったら……と思うとますます運命を感じずにはいられない。

12月×日

 久々に銀座へ。長い行列とテレビの取材。きょうがアバクロ銀座店のオープン日らしい。行列にも渋滞にも興味ないので足早に素通りして、ギンザ・グラフィック・ギャラリーで開催中の「広告批評展 ひとつの時代の終わりと始まり」へ向かう。展示のディレクションがグルーヴィジョンズ。昔から広告批評は事あるごとに購入してきて大好きな雑誌だったが(とくに中村至男、グルビのAD時代)、この展示はまさしく「ひとつの時代の終わり」以外の何物でもなかった。1F中央に設置された白い箱の中に、トイレの落書きのような寄せ書きコーナーがあって、それが新しい広告批評の「始まり」に相当するらしかった。新サイトのURLと、その周りにマジックペンで書かれた広告業界人、編集者、あるいは広告業界を目指す学生たち?の、いまだに広告の未来を信じて疑わなそうな(とぼくには感じられた)書き込みの数々。2ちゃんやSNSの向こうを張っているようでいて、実は思い切り閉じているその小部屋にこそ、広告と広告批評のひとつの時代の終わりを見た気がした。会期がもしも半年後の(twitterとUstreamがある)現在だったら、切り口が全然違っていたかも、とも思う。広告批評の本当の「始まり」に期待している。

 会場を後にし、新橋のクリエイションギャラリーG8とガーディアン・ガーデンで開かれている「手ぬぐいTOKYO」へ。200人のクリエイターによる手ぬぐいの展示即売。以前ぼくも、複数のクリエイターによる…という触れ込みのTシャツ競売に参加したことがあるが、この手の企画では売れる商品と売れない商品の差が如実に表れて、ある意味非常に酷だといえる(自分のは売れなかった方)。この企画展に限らず、売れる作品とそうでない作品の違いをはっきり見極めることは、プロダクト制作において非常に参考になると思う。ネームバリューがあれば売れるというわけではなく、かといってクオリティが大事かと思えばそれだけでもない。

12月×日

 もうすぐ終わりそうなヴェルナー・パントン展を観に、初台の東京オペラシティアートギャラリーへ。徹底的にモダンで未来的で、ラグジュアリー(←パントンのパターンをジャケットに使ったFPMのアルバムのタイトル)を追求したプロダクトの数々。最近観てきた質実剛健、シンプル・イズ・ベストのプロダクトとは対極の世界。パントンのインタビュー映像を観ながら、3Dカーペットの「ウェーブ」に寝転んでそのままうとうとしてしまった。

12月×日

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 年の瀬。今年はありがたいことにたくさんの仕事に恵まれた。しかも締めくくりを、ずっとデザインに関わっているスムルースのアルバム撮影のための大阪出張で飾ることができた。前回(1月)と違って遊びにいく時間はほとんど取れなかったけど、大阪の中心部から少し離れた岸和田で同じ時期に開かれている、はまのゆかさんの「Thank you!! 原画展 〜デビュー10周年記念〜」だけはどうしても観ておきたかった。はまのさんは「13歳のハローワーク」の挿絵で有名なイラストレーターで、スムルースのヴォーカル徳田君の大学の後輩にあたることを前々から聞いていた。

 なんばから特急サザンに乗って岸和田へ。古き良き情緒が残る街並みを歩くこと約15分。会場の自泉会館は、古い様式の建築がそのまま残されている、地域の大きな公民館みたいなところ。その一室にはまのさんの10年分の作品が並べられている。手作り感あふれる展示が彼女の絵にはよく似合っているように感じられた。本人に会えなくても、と思い、ノートに感想とスムルースの撮影で東京から来た旨を残して帰ろうとしたら、それを見たはまのさんご本人が声をかけてくれて、スムルースのことや絵のことについて短い時間話すことができた。こんな小さなことでもいつか何か、自分自身や自分のまわりでつながることがあればいいなと願いつつ、いつも展覧会に直接足を運んでいる。

>>展覧会日和[2009・9~10月]

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9月×日

 「堀内誠一 旅と絵本とデザイン」がまもなく終わるので、歩いて世田谷文学館へ。堀内さんの膨大な仕事が、旅、絵本、デザインの3つのテーマに沿ってまとめられていた。イラストレーターが描く手描き地図+旅エッセイの元祖が堀内さんだともいわれている。昔の「アンアン」や「オリーブ」で盛んに喧伝されたパリのイメージに誘われて、実際に旅してみると、建物は古くて汚いし、路上には犬やウマの糞があちこちに落ちている。真実のパリは日本人の女の子たちが連想したような可愛い街ではなく、しっとりと落ち着いた色合いを持つ大人の街だった……。パリやヨーロッパの間違ったイメージを日本に流布したのが堀内さんではないか、と勝手に思っていたら全然そんなことはなくて、展示されていた書簡や旅行記のそこかしこに「実際のパリは汚い」みたいなことが散々苦々しく書かれていて面白かった。堀内さんの作品やデザインにも、日本人特有のすっきりしたわかりやすさでは割り切れない、独特のビターな感覚が宿っているように感じられる。

9月×日

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 渋谷の松濤美術館で「江戸の幟旗 庶民の願い・絵師の技」を観る。幟旗(のぼりばた)とは端午の節句の時期に神社等に飾られる細長い旗のことで、収集家によって集められた江戸時代から伝わるコレクションの数々が展示されていた。横が短く縦が長い定型のサイズの中に、文字だけをデザインしたもの、可愛い干支の動物のイラストが描かれたもの、天地の長さを上手く使って天上から庶民の生活を見下ろすような構図で描かれたドラマチックなもの、などいろいろな種類がある。どれも端午の節句のため、という目的から、子どもへの温かい眼差しや可愛さ、メッセージ、元気さなどが込められているようだ。幟旗の日本随一のコレクターは、イラストレーター北村範史さんの叔父さんだそうで、今回のコレクションもその叔父さん(勝史さん)が所有するものが大半を占めているのだという。展示物の多くが収録された美しい図録を買って帰った。

9月×日

 たくさんの仕事が終わったり始まったりする中、束の間の休息を求めてギャラリーへ。馬喰町のFOIL GALLERYで、前から見たかった青木陵子作品展「オブジェクト・リーディング」。青木さんの作品は、前にKiiiiiiiのライブを観るためNYを旅したとき、チェルシーのギャラリーで観たことがある。KiiiiiiiのLakin’(多田玲子)のドローイングに共通するセンスを感じる、ノートの切れ端などに描かれた絵が、広くて天井が高いギャラリースペースいっぱいに無造作に広がっていた。今回もそのときと同様の展示。繊細なのに暴力的。

9月×日

 9月は連日多忙のため、観たかった和田誠さんの展示@gggを見逃してしまう。仕事を終えて夜、北村範史さんの展示第二弾「SCRAPS」を観に、事務所のすぐ近くのバーhanamiへ。店内の壁一面にこれまでにカラーインクで描いた作品のプリントアウトが飾られている。これまでの作品のベストアルバム的な展示。カラーインクはインクの特性上褪色が気になり、代わりにそれよりも長持ちするインクジェットで出力した作品を、グッズ感覚で販売することを思いついたのだそうだ。このやり方だったら、作品を各地に送って全国ツアーもできそう、みたいな話で盛り上がった。

 
10月×日

 忙しい中風邪を引いてしまった。インフルエンザではなかったのが幸いか。急に肌寒い季節の変わり目、原宿のGAPで娘のスパッツを買ったあと、HBギャラリーでさかたしげゆき個展「子どものころ」。丁寧に描かれた風景画とキャラクターっぽい子どもの絵のミックスが新鮮(→PICT WEB)。そのあとOPAギャラリーに移動して、年に一度の河村ふうこ&毛利みき展「私の部屋〜花を添えて」の初日へ。河村さんと毛利さんにご挨拶と、昨年の展示直後に生まれた娘の写真を見せて軽く自慢(申し訳ない)。河村さんの絵が少し大人っぽくなった。毛利さんのカモミールの絵が、香りが漂ってくるみたいに素敵だった。

 娘の寒さ対策に青山のマクラーレンにベビーカー用の防寒具を買いに行く途中、急に尿意を催し公衆トイレを探したが見つからない。喫茶店と思って駆け込んだ場所が、たまたま秋山庄太郎写真芸術館という写真家の私設ギャラリーだった。我慢ができず結構な入場料金を払ってようやく思いを果たしたあと、せっかくなのでそのまま展示を隅々まで見ることに。「それぞれの四季~前田真三+前田晃+秋山庄太郎 風景三人展~」という内容で、秋山庄太郎と盟友の前田真三、その息子の前田晃の三人による風景写真を展示していた。恥ずかしながらここに来るまで、秋山庄太郎という写真家のことを全く存じ上げなかった。風景写真を撮る際に自分の存在を消し去るという前田真三氏と、風景を目にした瞬間の感動をも写真に封じ込めた秋山庄太郎氏の、二人の作風の対比が面白い(晃氏は父に近い)。どちらの写真が好きだったかと問われれば、間違いなく秋山さんの方だろう(「デザイン=器」的には、器の上に載る料理には存在感が充満しててほしい)。トイレに行く用事がなければ一生訪れることはなかっただろうけど、普段見ないタイプの写真をじっくり見ることができ、そこから多くのことを学べてうれしかった。

 ほっとした気分で、帰りにギャラリー360°に立ち寄る。「ジャパニース・ポップ NOW」というタイトルで、日本のポップな画家(スージー甘金、伊藤桂司ほか)の作品を展示していた。逆柱いみりという漫画家が描く油彩作品の、奇妙な異国情緒とパノラマ感に釘付けになってしまった。作品そのものがほしいくらいだったが、販売されていたミニ画集「臍の緒街道」でがまん。
 
10月×日

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 レコード会社でのミーティングのちょっと前に、原宿ソーン・ツリー ギャラリーのグループ展「bird watching」を覗く。グループ展とはいえあなどれない力作揃い。図録買ってくればよかった……。

>>展覧会日和[2009・7~8月]

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7月×日

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 イラストの仕事では何度もお世話になっている北村範史さんの展示「スカート」を観に、早稲田のLIFTへ。いつものシルエット画をモノクロで描いた作品が並ぶ。いつも思うが、モビールや机など小道具をフルに利用した展示空間の構成がすごく上手い。ただ作品を生み出すのではなく、それがどう飾られるかまで意識を及ばせていくからこうなるのだろう、と勝手に想像する。

 あとからギャラリーにやってきた北村さんと地下で少しビールを飲みながら話す。モノクロで描いた理由や、知人の話など。長い付き合いになるが今回初めて原画を一点購入させてもらった。

7月×日
 新宿のコニカミノルタプラザで「THE BOOM20周年記念写真展〜宮沢和史、地球をつなぐ旅」なる催しが開かれているのをたまたま知る。展示は、宮沢和史がツアーで訪れた先で撮影した写真と、彼のライブに同行する機会の多い写真家・仁礼博さんと中川正子さんによる写真と、二部屋に分かれていた。申し訳ないがプロの二人の写真が蛇足に思えてしまうほど、宮沢和史の旅の写真が自然体で良かった。昔、ブラジルや異国の土地は彼にとって探求とか吸収の場だったのかもしれないが、写真を見る限り、いまはどの場所も日本のいろんな地方と同じように“ふるさと”なんだろうな。

7月×日
 原宿のGYREとVACANTで開かれる、日本初の大がかりなアートブック/ZINEの展示即売会として話題のイベント「ZINE’S MATE, TOKYO ART BOOK FAIR 2009」に行く。最初に行ったGYREの方はギャラリーや出版社などの大きめの団体が出展しており、第二会場のVACANTはアマチュア〜個人による出展が中心。3日間の中日の土曜日だったからか、とにかくどちらも混雑していて、まともに作品を吟味できる状態ではなかった。特にVACANTの方は通路が狭く、移動すらままならない。上のリンク先の写真で見られる木の棒に小冊子をはさむ展示方法も、一見してどういうZINEが展示されているのかわかりにくく、什器の前に多くの人が群がって離れない要因にもなっているように感じられた。あれでは本がかわいそう。昔ミニコミを発行していたことがあるので、こういった自費出版の試みには常に関心を持ち続けているけど、近年のブームを通して見たZINEの印象は「ミニコミー編集=ZINE」といった感じで、稚拙なところばかりが目に付いてしまう。結局この日はギャラリー360°のブースで、珍しいユニクロのホンマタカシTシャツ(WAVE柄)だけを購入。

7月×日
 シリーズで担当しているロックバンドの第二弾アルバムの打ち合わせが終わった後、横浜へ。まずは、横浜美術館アートギャラリーの「柳宗理展」。柳宗理といえばまずインテリアや食器のデザインが頭に浮かぶが、駅や公園などの公共物のデザインも美しく可愛かった(Wikipediaにも写真が)。

 そしてこの日のお目当ての赤レンガ倉庫「浜田島」へ。「浜田島」は、アートディレクター田島照久がこれまでに手がけた浜田省吾のアルバムやツアーのグラフィックを(一部リメイクしつつ)一挙に公開する大規模な展覧会。浜田省吾自体はどちらかといえば長渕やスプリングスティーンにも通じる熱いキャラクターだと思うが、彼を支えてきた田島さんのグラフィックは一貫してクール。Helveticaをはじめとする欧文書体を多用した手法は80年代の王道であり、一見対極に位置するようなピチカート・ファイヴや渋谷系のデザインとも意外と共通する部分が多く、裏・信藤三雄的な味わいがある、というのが発見だった。CG映像の「ON THE ROAD」ツアートラックも、どことなくグルビ的といえなくもない……。熱烈な浜省ファンの人たちに田島さんの作品がどのように届いていたかは知る由もないが、これだけのハイレベルなグラフィックを常に浴び続けてきた浜田省吾のファンは幸せだと心から思う。ちなみに田島さんは「攻殻機動隊」のパッケージ等も手がけるいまだ現役。圧倒的な迫力の図録と、大判のタオルを買って帰る。タオルは写真柄で、オープンカーにひとり乗る浜省を引きで捉えた写真の下にHelvetica Condencedで「SHOW ME YOUR WAY, I’M A J.BOY.」。

7月×日
 凸版印刷のあるビルのP&Pギャラリー(飯田橋)で「GRAPHIC TRIAL 2009」という展示を見る。秋田寛、植原亮輔、佐野研二郎、八木克人の4人のアートディレクターによる印刷実験はユニークだが、一時期の竹尾ペーパーショウと同じく凝りすぎていて(ぼくレベルの)実戦にはあまり役に立たなそう。

 銀座に移動し、ギンザ・グラフィック・ギャラリーの「2009 ADC展」へ。ものすごい既視感と閉塞感。いつもと同じ顔ぶれのアートディレクターが、いつもと同じクライアントの仕事をして、それを互いに褒め合っているような図が目に浮かぶ。これだけ広告不況、出版不況といわれる中で、アートディレクターの仕事が数年前までと同じ水準をキープし続ける、なんてことはまずあり得ないはず。すでに不況の影響は新人・中堅レベルには出てきているような印象があるし、来年以降のADCがいろんな意味で気になる。

7月×日
 表参道のRAT HOLE GALLERYで荒木経惟「POLART 6000」。女、花、ネコ、食べ物などテーマに沿ったポラロイドが、正方形や長方形のマトリックスに並べられた作品。写真自体もさることながら、そのセレクトが面白い。時事性も取り入れられていて、撮影の時期の新聞記事の写真がさりげなく紛れていたりする。忌野清志郎の死亡記事を含む花の作品は、清志郎当人に捧げられたものらしい。草なぎ剛の記事も何点か入っていて笑った。例の事件もあと数年すれば、あの人のいい笑顔の奥にきっと消え去ってしまうだろうけど、この年、草なぎ君は酔っぱらって赤坂の公園で全裸で騒いで現行犯逮捕されたのだ、ということを写真を見ながら改めて肝に銘じた。いじりまたべえ。
 

8月×日
 COWBOOKSのリトルプレスフェア、結局何も買わず、Paul Smith SPACE GALLERY「田名網敬一+ピート・ファウラー 夢の帝国」へ。観る前は意外なコラボレーションと思っていたが、実際観てみると案外そうでもなく、田名網さんのカラーでねじ伏せたという印象も。

8月×日
 出勤の途中、lamfrommのマーク・ボスウィック展「anna rose’ if handed down」へ。ポラロイド一枚で、こんなにきれいで広がりある世界を作り出せるってどういうことだろう。忙しくなってしまい、結局4会場のうち行けたのはここだけ。残念。写真集『not in fashion』でがまんしよう。

8月×日
 初めて行く勝どきの、バタフライ・ストロークの事務所に併設されたギャラリー、@btfの佐内正史写真展「EVA NOS」を観に行く。全く予備知識を仕入れずに行ったので、写真を見て心の中でひと言「ああ、パチンコか……」。佐内さんがパチンコCRエヴァンゲリオンの前に座って、弾を打ちながらシャッターを押し続けたという対照シリーズの写真集からの展示。会場に届いていた花輪の主が、押尾先生の事件に関わっているという噂の人物だったことが気になったくらいで、特に感慨はなかった。

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 勝どきから銀座まで運動がてら橋を渡って歩き、gggで開かれている「LAST SHOW 細谷巖アートディレクション展」へ。雑誌「ブレーン」もデザイナーが変わってしまい、細谷さんの仕事に直接触れる機会も少なくなってしまった。新作のグラフィック作品に添えられた明朝体がやけに格好良くみえて、家に帰って調べてみたら、誰でも知っている小塚明朝だった。こういうのが粋なフォントの使い方なんだろうな。今回の新作を収めた図録「LAST SHOW」とggg Booksの作品集を買って帰る。細谷さんの仕事はいつもシンプルですっきりしていて好きだ。

8月×日
 HBギャラリーにちょっと寄った後、近くのFRAMeWORKで開かれている北村範史「球根 2009」展へ。階段入口で待ち構える球根の巨大な姿にビックリ。レディースのブティックが会場ということで、一通り観て何も買わずにすばやく帰ってしまった…。

8月×日
 表参道でのミーティングの前に大急ぎで、大丸ミュージアム・東京のいもとようこ絵本原画展を観に行く。新沢としひこさんの別冊の仕事が縁で誘われた保育雑誌のリニューアルデザインのコンペに勝ち、来年度から表紙と内容の一部を担当させてもらえることになったのだが、その表紙イラストがいもとようこさんなのだった。たくさんの絵本の原画をページ順に並べた、見ごたえのある展示で、中でも日本の南の離島にしか生息していないくろうさぎの子育てのようすを描いた『とんとんとんのこもりうた』は、ぼく自身の子育ての思い出と重なってなんともいえない感動が胸に迫った。急ぎ足で、じっくりとすべての作品を見終えてから、その保育雑誌のミーティングへと向かった。

>>展覧会日和[2009・5~6月]

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5月×日
 ギャラリー360°でホンマタカシ「トレイルズ」を見る。銀世界に点々と血痕が。狩猟の痕跡を捉えた新作とのこと。村上龍で一番好きな小説『愛と幻想のファシズム』の狩猟のシーンを思い出した。

5月×日

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 黒沢さんのボックスセットの仕事が佳境に入る前に、清澄白河へ。前から気になっていた浅田政志の写真展「浅田家 赤々・赤ちゃん」をAKAAKAにて(→ルポ@KARONSNET)。主役の浅田家のみなさんによる手作りの飾り付けにほっこりさせられる。今回の展示作品には、浅田家以外の家族が被写体になったものも含まれている。資料によれば、どの家族とも何回かに渡る綿密なミーティングを繰り返して撮影に臨んだという。そうした表に出ない手間のかかる仕事を経て、ただの写真が特別な写真へと変わってゆく。写真でもデザインでも音楽でも、そういう目に見えない部分の仕事が膨大であればあるほど、表に出る部分の広がりがどんどん増していく。浅田さんはそのことをよくわかっている作家だと思った。

 倉庫があるビルに移ったhiromi yoshiiで、HIROMIXの久々の個展『早春、心の輝き』が開かれていた。途中に挿入された本人のドローイングが、写真の邪魔をしているように思えてならなかった。

5月×日
 渋谷は初夏の風が強く、道行く女子高生のスカートを舞い上げていた。パラシュートの形にふくらむのが格好いい。5月前半に作業したCDの色校をクライアントの事務所に見に行く途中で、Bunkamura Galleryで開かれる「-少女幻想綺譚-その存在に関するオマージュ」というタイトルの展覧会に立ち寄った。宇野亜喜良、金子國義、四谷シモン、丸尾末広、山本タカト……と出展者の名前を見ただけで、パブロフの犬のように「少女」のイメージが心に浮かんでくる。人形あり絵画ありと想像以上に面白かった。

5月×日
 HB Galleryで小林愛美個展「hitokoma」を観る。豊島ミホ「檸檬のころ」表紙の画家。四角の中に極限まで抽象化された風景がとびきり心地よい。いまネットで見られる作品はこちら→pict web

 
6月×日
 黒沢さんのボックスセットが、実作業半月ちょいという短期間で終了。執筆やアイデア出しも含めて“すべて出し切った”状態。もぬけの殻のまま、銀座へ。ギンザ・グラフィック・ギャラリーのマックス・フーバー展。Akzidenz GroteskやFuturaが飛び交うヨーロッパの王道的デザインという印象。河野鷹思の娘さんでもある奥様の葵・フーバー・河野さんのデザインが、個人的にはとても興味深い。

 新橋まで足を延ばし、クリエイションギャラリーG8の「JAGDA新人賞受賞作家作品展2009」へ。自分ごときが口を挟める資格などないのを承知で言わせてもらえば、受賞作品が年々小粒になってきているような気が……。不況と歩調を合わせるようにスターデザイナーが減りつつあり、個人の才能で引っ張っていく仕事より、デザイナーが一歩下がったチームとしての仕事が増えてきているのではないか(顕著に感じるのは、福岡南央子さんのキリンビバレッジ「世界のキッチンから」や、居山浩二さんの仕事など)。それはそれでありだと思う。

 よく間違えるのだが、新橋側だとずっと思い込んでいて実は京橋側だったというギャラリー小柳へ(30分ぐらい探し回ってバカみたいだった)。鈴木理策「WHITE」(→KARONSNET)は、「雪」のシリーズの最新作。黒沢さんのアルバム『Focus』を聴いて一番最初に浮かんだのは、実は鈴木理策さんの雪の写真だった。鈴木さんの写真を使わせてもらうことも一瞬だけ頭をよぎったが、スケールがあまりに大きすぎて、小品のようなアルバムの雰囲気に合わないと思い却下した。雪のない地方に生まれたぼくにとって、雪に覆われた世界は憧れである。ただ、そこに自ら足を踏み入れたいとは思わない(寒さが苦手だから)。写真で見ているのがちょうどいい。

6月×日

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 保育雑誌のサマーセミナーで販売するための本やCDのデザインで、梅雨から初夏の頃多忙になるのが恒例になりつつある。この時期はインプットがまったくできないが、武蔵野美術大学で開かれている「新国誠一の《具体詩》ー詩と美術のあいだに」だけはどうしても行きたく、重い腰を上げて小平市へ向かった。公明党のポスターが貼り巡らされる中を歩いて武蔵美の校舎へ。今年の初めに大阪の国立国際美術館で観た同名の展示とは内容が微妙に異なっており、独自の展示作品もあって、遠くまで足を運んだかいがあった。図録も、大阪展で同時販売された「新国誠一works 1952-1977」とは異なる独自のものが販売されていた。新国誠一の作品群から受けた衝撃は計り知れず、いつか形にして返せる日が来るといいなと思う。

>>展覧会日和[2009・3〜4月]

展覧会日和[2009・3〜4月] このエントリをTwitterに追加このエントリをはてなブックマークに追加

3月×日
 イラストレーター伊藤絵里子さんの展覧会『暮れる』を代官山のgallery it’sにて。日本のバンド、ハンバート・ハンバートの曲にインスピレーションを得て描いた作品とのこと。果敢にいろんなテーマにチャレンジしていて頼もしい。いつかまた一緒に仕事がしたいな、と。

3月×日

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 近所の世田谷文学館で荒井良二さんの『進める荒井良二のいろいろ展』をやっていたので家族で観に行く。生後4か月のうちの娘も展覧会デビュー。大泣きするか心配だったけど、ベビーカーに乗って大人しく鑑賞していてくれた。大竹伸朗にも通じるラディカルな作風のこんな絵が、絵本になって大人から子どもまでに愛されているなんてなかなかすごいことだと思う。マガジンハウスの雑誌に掲載された初期のイラストや、アトリエ再現など、広く深く荒井良二ワールドの源流までたどるような展示。あふれる色が目に眩しい。娘の網膜にも荒井さんの作品が焼き付いたかな?

3月×日
 子育てと仕事といろんな雑事に追われたこの数ヶ月だったが、ようやく少し落ち着いてきた。恵比寿のNADiff A/P/A/R/T 2FのArtJam Contemporaryで、伊藤桂司さんのギャラリー360°と同時開催の個展「SUPERNATURAL」を観る。デビュー当時から最近までのコラージュ作品が並ぶ楽しい展示。オールカラーでリーズナブルな同名の作品集を買って領収書をお願いしたら、後日郵送で、とのことだった。数日後に届いた封書の差出人を見たら「アミューズ」とあった。ふーん。

3月×日
 花粉症の薬をくれる病院の帰りに原宿Rocketに立ち寄ったら、木寺紀雄『おじいちゃん。おばあちゃん。』展をやっていた。木寺さんはホンマタカシの弟子だったという写真家。明るく乾いた色合いの中にゆる〜く収まった老人たちのポートレート。こんな風に歳を重ねてみたい。大島依提亜さんが手がけた同名写真集(フォトプリュスというシリーズ)もデザインが良くて素晴らしい出来。
 一旦事務所に出勤したが、WBCの大激戦中とやらで集中できず、水道橋まで足を伸ばして、トーキョーワンダーサイト本郷で開かれるグループ展「座布団レース」へ。戌井昭人・多田玲子、下平晃道、onnacodomo……と、よく知る顔ぶれが参加している。onnacodomoのライブエフェクト映像を、画面を二分割して、実際の映像とそのときどういうエフェクトが行われているかを同時に流す作品が面白かった。

3月×日
 代官山のcollex LIVINGでリサ・ラーソン展”CRAFT, LOVE, LIFE”。周辺の4つの店舗でスタンプラリーをやっていたので参加した。リサ・ラーソンはいままで全く無関心だったが、かわいい動物の置物たちに一目で心を奪われた。復刻版のネコの置物をひとつ購入。SPEAK FORでやっていた写真展「リサ・ラーソン写真展、そして日本とのつながり」の写真は、先日観た木寺紀雄さんが撮影していた。書籍化もされている(Amazon.co.jp)。リサ・ラーソンもすてきな“おばあちゃん”だった。

 
4月×日
 桜が満開。春が来た。予定になかったが、表参道のHBギャラリーとOPAギャラリーで同時開催されているタラジロウ『東京・日本/TOKYO★NIPPON』を観た。HBの方が日本全土&東京をパノラマ化した地図風の作品で、OPAではそこに登場するご当地キャラクターを一点ずつ紹介している。確かに二つのギャラリーは歩いてすぐの場所にあり、これまでもハシゴすることがよくあったが、この二箇所でひとりの作家が同時に展覧会を開くというのは、なかなかない発想ではないか。きっとサービス旺盛なんだと思う。ウェブサイトを見るとまさにそんな感じで……グラフィックデザインも達者で、デザイナーにとってはやりにくい存在かも(笑)。
 
4月×日
 HBギャラリーでイラストレーター七字由布さんの個展「七字近代美術館展」を観る。近代美術を軽くパロディ化したセンスと作品のタイトルが絶妙。静物デッサンの王道モチーフに洗剤のボトルが紛れ込むだけで、こんなに面白いなんて。→クリ8
 
4月×日
 再び代官山へ。嵐の前の予感がするので平穏なうちにできるだけ回っておく。SPEAK FORの菅付雅信 編集作品展『編集天国』。「大変だ」と中島英樹さんがブログでこぼしていた同名作品集(ちゃんと展覧会に間に合っていた)の出版記念企画。夏木マリのナレーションによる音声ガイドで聞く歴代仕事のエピソードは、バブル崩壊以前の威勢のいいビジネスマンの武勇伝を聞かされているようでもあった。近年のエコに絡んだ仕事など時流を読むのが上手い人だと思うが、最近の仕事には特別に感慨はなかった。彼の仕事で好きなのは、井上嗣也氏と組んで作った1992年の『composite』創刊号(朝日出版社)。これだけはいまも大切に保存している。

4月×日

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 銀座巡り。iPod touchのSafariが突然フリーズし、ホームボタンを押しても復帰しなくなった。Apple Storeで一通り試してもらうが復帰せず、保証期間内とのことで完全な新品と交換してもらう。トクした気分。ギンザ・グラフィック・ギャラリーで09 TDC展を観た後、新橋のG8でフィリップ・ワイズベッカーの個展「recollections」へ。工具や日本の行灯、監獄、電気回路などが独特の狂ったパースで描かれている。素晴らしかったのは同時発売のカタログで、ノートに描かれる彼の絵の質感がそのままに再現されていた。即購入。

>>展覧会日和[2009・2月]

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2月×日

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 青山から原宿の住宅街へ出戻り再オープンしたROCKETで、ネヴィル・ブロディの展示「BRODY@ROCKET」があるというので行ってみた。昔は2Fもフルに使った展示空間が魅力だったが、今度のリニューアルでは天井の高い1Fだけを使っていて、ブロディの作品もポスターやアートワークが貼られただけの簡素な展示。80年代のTHE FACE誌やキャバレー・ボルテールのジャケットなどの仕事が脳内に焼き付いているから、別によかったけど(→公式サイト)。ブロディやカーソン、デザイナーズ・リパブリックを含む、90年代のデジタル・タイポグラフィのムーブメントについてはいつかきちんとまとまった形で見てみたいと思う。

2月×日
 もはや恒例の見本帖本店「クリエイター100人からの年賀状」展へ。移転の挨拶状を兼ねた細山田デザイン室の周辺MAP付年賀状が目を引いた。牛柄や丑の文字を使った表現にもいろいろあって面白い。竹橋まで歩いて、東京国立近代美術館の「コラージュ-切断と再構築による創造」を観る。展示会場のギャラリー4は小ぶりで、たくさんの作品を期待すると肩すかしを食う。大竹伸朗や伊藤桂司の作品はなかった。

 娘の誕生祝いをくださった方へのお返しに今治タオルを贈ろうと思い、帰りに新宿伊勢丹の販売コーナーに立ち寄って何枚か選んだ。今治タオルは、佐藤可士和がブランディング・ディレクションを担当してずいぶん話題になった。「ブランディング」という言葉にはいまだに眉唾な印象があるが、この佐藤可士和が手がけた今治タオルプロジェクトはブランディングの見事な成功例といっていいだろう。もともと愛媛県今治市は国内のタオル生産の半数以上を占め、国産タオルといえば今治であり、ま、いわばありふれた存在だった。それが中国製の安いタオルに押されたのを機に、高品質化への道を進んでいく。ごくありふれた国産タオルが、佐藤可士和のデザインと見立ての後押しも加わって、いまでは高級・高品質タオルの代名詞に……。特別なファンではないが、彼のこういう仕事ぶりには感心してしまう。彼の本質は、デザイン機能の付いたマーケターではないかと思う(もちろんデザイナーとしても優秀だが)。自分が、編集機能の付いたデザイナー(あるいは逆)なので、その辺の立ち位置にはなおさら共感できるのだ。もっともブランディング云々以前に、佐藤可士和自体がひとつの「ブランド」だという説もあるが。

 ……と、娘の内祝にまでデザインのことをあれこれ考えてしまう父親ってどうだろう? 大きくなったら聞いてみよう。

2月×日
 初めて行く吉祥寺美術館で、原研哉デザイン展「本」を観る。副題にあるとおり「友人、原田宗典がモノ書きだったおかげで」、デザイナーとしてのキャリアが始まったのだそうだ。正直、原さんが著書で展開するデザイン論・表現論にはある程度共感しつつも、心のどこかで小さく違和感を感じていた。デザインを駆動する力の第一歩は多くの芸術と同じく「初期衝動」であり、それは決して理論化したり言葉にすることができないものだと思っているからだ。だが今回、初期から最近までの仕事を順番に並べた構成のおかげで、原さんの仕事の背後にひそむ初期衝動を少し垣間見ることができてよかった。

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 続いて、前から気になっていた金谷裕子展「長寿の子」を観るためにじ画廊へ。ステンドグラスをほうふつさせる平面構成。色彩感覚はKiiiiiiiのLakin’とも共通点を感じる(やっぱり友だちだそうだ)。不思議な印象を残したまま、本日のお目当ての下平晃道個展「覚えたての空間」(Artcenter Ongoing)に向かった。「覚えたて」=子どもの頃、ということで、生まれた頃の網膜に焼き付いた光景を再生しているかのような、ぼんやりしたペインティングが並んでいた。自分自身が子どもの視点であり、また数ヶ月後にはこの世に生まれてくる子どもを想う親の視点にもなっている。そんな感想を伝えたら「なるほど〜」という感じでうなずいていた。夢中で描いたり撮ったりした作品には、作者の隠しきれない心の内側がありありと浮かんでいることがよくあるものだ。

2月×日
 伊藤桂司久々の個展「TURN ON, TUNE IN, CUT OUT!」を表参道のギャラリー360°で。コラージュだと思っていたらペインティングだった。油彩の一か所が車や人などのシルエットで白く抜けている、シュールな作品。その後、TKG代官山でチャップマン兄弟とデミアン・ハーストの作品展を観る。

>>展覧会日和[2009・1月]

展覧会日和[2009・1月] このエントリをTwitterに追加このエントリをはてなブックマークに追加

1月×日
 展覧会ではないが、数少ないデザ友のウチコガさんのお誘いで、目黒のグルーヴィジョンズの事務所で開かれる「グルビのフリマ2」に行く。ぼくのグルビ歴は東京初進出のROCKETでの展覧会から。集めたGRVナンバーは数知れず。あまりに好きだったので、当時勤めていた会社で進行していたTHE BOOMの10周年記念企画のデザイナーにグルビを推薦。ディレクターに同行して憧れの伊藤さんとの面会を果たすという職権濫用っぷり(もちろんGRV0892の名刺はいまも大切に持っているし、『No Control』ほか4枚のグルビデザインのCDがあとに残された)。そんな時代ももはやノスタルジーの彼方である。この日は結局、当時の事務所の棚でも光っていたDIGITALOGUEのティッシュボックス(GRV2000パッケージの元ネタ)とoasisのロゴをパクった「oaiso」コースターセットの2点をゲット。

1月×日
 新年初の展覧会はなんと大阪で。去年娘が生まれる前日がCDの入稿日だった大阪在住のロックバンドが、地元で行うツアーファイナルを、特別に旅費付で観させてもらうことになった。会場に早めに着いたので、ちょっと抜け出して近くにあるdddギャラリーで開催中の「ヘルベチカ展」へ。去年から今年にかけてヘルベチカ書体の回顧展がいくつか開かれているが、これは間もなく出版される「Helvetica Forever」という本の関連企画らしい。ヘルベチカの制作過程のノートや、ヘルベチカを使った世界各国のデザインの展示など。大阪のdddは銀座のggg(どちらも大日本印刷系列)に比べて狭く、展示もコンパクトで物足りなさを感じつつ、とにかく最近のASKULのパッケージが何よりも強く印象に残った。

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 そのあと電車で中之島に行き、今回の大阪行きの(ライブをのぞく)最大の目的だった、国立国際美術館「新国誠一の《具体詩》 詩と美術のあいだに」へ。新国誠一は、コンクリート・ポエトリー/具体詩と呼ばれるジャンルで革新的な作品を残した詩人である。彼の名前を知ったのは、たしか2002年頃、名古屋のコロンブックスで、やはりこのジャンルの第一人者として有名な北園克衛の展覧会が開かれたとき、会場で買ったコンクリート・ポエトリーの作品集「anthology of concretism」に載っていたのを見たのがきっかけだった。リンク先でも見ることができるが、リミックスやカットアップにも似た手法で、日本語・漢字の全く新しい側面を切り取った作品に衝撃を受けた。前衛的なのにその芯に確実にポエジーが宿っているところにも強くひかれた。代表作の詩集『0音』をずっと探していたが、このたび『0音』を含むこれまでの仕事の集大成となる待望の作品集/カタログが発売されるのにともない、大阪で回顧展が開かれることになった。詩集として本として見るのもむろん良いが、こうやって大きく引きのばされた作品一点一点とギャラリー的空間でまっすぐ向かい合うのが、新国誠一の詩にはとてもふさわしく思えた。もちろん作品集『新国誠一 works 1952-1977』も購入。

 すぐ近くのgraf media gmにも久し振りに寄った。前回訪れたのはKiiiiiiiとOnnaCodomoのライブのとき(田名網敬一関連のイベント)。この日は佐々木愛「GOLDEN」という展示の期間中だった。昨年ここで展示をしたKiiiiiiiの大きな缶バッジが売られていたので、すかさず購入(しかし十日後くらいにいきなり紛失……くやしいっ)。

1月×日
 大阪公演が波瀾万丈のうちに終了し、きょうは一部のCD購入者を対象にしたスペシャルミニライブの日。雨降りだったが、ほんの少しだけ時間が取れたのをいいことに、電車で心斎橋へ移動し十数年ぶりにアセンスに行った。アセンスギャラリーでは、ナディッフでも見た昭和40年会の展示をやっていた。冷静に比較すれば、やはり東京の展示の方がばかばかしさの面では上だったし、昭和40年会という団体には合っているように感じられた。大阪で、というか、東京以外の地方でアートを好きで居続けるのは、きっと特別なことに違いない。東京に比べたらギャラリーの絶対数も広さ・環境も不足しているだろうし、受け手の側もアンテナを高く鋭く伸ばす努力が必要になる。だから地方が劣っているとかそういう話ではなく、逆にその土地ならではの独自の文化が育つことにつながるかもしれない……というようなことを帰りの電車の中でつらつらと考えた。

1月×日
 松屋銀座で玲子のおばあちゃんが吊し雛の展示会をやっているというので朝から観に行った。色鮮やかな毬と、それぞれに由来がある動物や野菜やいろんな物がひとつひとつ手縫いで作られ、糸で吊されているものもあり、単品で盆に載せられるものもあり。ゆるキャラにも通じる可愛さもあって面白い。玲子のお母さんから娘の誕生祝いに、と単品のひな細工いろいろとお盆のセットを戴いた。有り難い。生後初めてのひな祭りにぜひ飾ろう。

 せっかくの銀座なので、まずはRING CUBEというギャラリーで開かれている森山大道の写真展「銀座/DIGITAL」へ向かう。場所は、銀座の交差点の一角にある三愛ビルの上。実はここ、少し前までは喫茶店だったところで、打ち合わせによく利用していた。銀座のど真ん中にしてはリーズナブルな値段ながら、円筒型の壁の周囲にしつえられたテーブルの窓から、交差点を行き交う人々を神の視点で見下ろすことができる見事な眺望が売りだった。いまはリコーが丸ごと買い取ってカメラのショールーム&ギャラリーとして使われている……というわけだが、ギャラリーのためとはいえ絶好の眺望だった窓をほとんどカーテンで隠してしまうのは勿体なさすぎる。展示は森山さんが初めてリコーのデジタルカメラで撮り下ろした銀座の街並みということだったが、喫茶店の懐かしさが募るばかりでほとんど印象に残らず申し訳ない。

 松坂屋のMUJIで少し買い物してから、新橋・クリエイションギャラリーG8の「仲條服部八丁目心中」へ。服部一成のミニマリズムと仲條正義の大胆さの対決が面白かった。どっちも勝ち。

1月×日

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 ひと山超えた記念に朝から三茶に行く。生活工房ギャラリーの「世田谷でみかけた書体」。書体デザイナー竹下直幸さんのフィールドワーク「街でみかけた書体」の世田谷ヴァージョン。ぼくなんかはどちらかというとカッコいい書体・自分の好きな書体を選り好んで使う傾向があるが、世の中では至る所でたくさんの書体がそれぞれの用途に合わせて(ときには微妙なミスマッチもはらみつつ)使われている、ということがよくわかる展示だった。書体に対する垣根を取り外さなくては、とちょっぴり反省。

 次に青山に向かい、RAT HOLE GALLERYの森山大道写真展「北海道」を観た。1978年に北海道に3か月滞在して撮影した未発表写真からのセレクト。これは森山さんの真骨頂としかいいようがない。ユトレヒトのセレクトショップNow IDEAにも立ち寄ったが、この日は展示が休みだった。

>>展覧会日和[2008・11〜12月]

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