大竹伸朗「全景」

zenkei-1 東京都現代美術館で12月24日(日)まで開かれている、大竹伸朗の回顧展「全景」へ。都内では今年の初めくらいからフライヤーが配られていて、ずっと楽しみにしていた。ぼくにとってはナディッフで見た「ぬりどき日本列島」が最初の衝撃で、デザインやイラストを始めたのがちょうどその頃だったから、影響というかエネルギーはかなり受けた記憶がある。

 観覧者は入場後3Fに移動し、そこから下に降りていってすべてのフロアを巡回しながら、大竹さんが残した膨大な作品を順を追って観ていく。とにかく「膨大」である。一人の人間の脳の中に、これだけの作品を生み出すほどの広大な可能性が秘められていることに、ただただ驚く。

 最初のうち、子ども時代から青年時代くらいの作品までは、まだ正気で観ていられる。そこには「稚拙さ」とか「青春」といった一般世界のクリシェと結びつく余地がかろうじて残っているから(少年時代の作品からして十分に天才的なのだが)。しかし、その時期を超えてクリシェの梯子が外され、大竹さんの脳内世界が延々とノイズ・ミュージックのように展開されていく、デビュー以降現在までの作品群がとにかく強烈。途中で自分がどこにいるのか見失ってしまったほどだった。これから行く人にはこの無意味の海の奔流をぜひ楽しんで(溺れて)ほしい。

 大竹さんもやはり多くのクリエイターと同様に「旅」から大きなインスピレーションを得ていることは、青年期の別海、ロンドンをはじめ、90年代以降のモロッコやイスタンブールを描いた作品からうかがうことができる。「ぬりどき」や「日本景」のモチーフも国内の旅から。荒涼とした脳内風景の合間に時折見られる旅「景」にも、大いに心ひかれた。

モロッコの旅日記「カスバの男」(集英社文庫)

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