熊田千佳慕展(2006)

仕事で秋桜(コスモス)を描こうと思い、植物の資料を図書館に探しに行く途中、目黒区美術館で開かれている熊田千佳慕(くまだちかぼ)展のポスターが偶然目に入ったので、立ち寄ることにした。千佳慕は詩人の兄・熊田精華がデザイナーの山名文夫と親友だった縁で(この二人の往復書簡を中心にした展示も同時開催)、一時期、名取洋之助の日本工房に入社し、有名な雑誌「NIPPON」やいくつかの広告のデザインを手がけている。しかし病弱のためすぐにデザインの仕事を離れ、その後、95歳の現在までマイペースを保ちながら絵本作家や絵描きとして活動している。最初に絵本作家としてブレイクしたのは60歳を過ぎてから、というから驚く。
広い壁にずら〜っと飾られた花や昆虫の絵は、まるでその場で動いて息をしているかのように光を浴びて輝いている。眩しい。写真よりもはるかに高感度。これは見たものを見たまま描くという写生のレベルをとうに超えている。写真を撮ることや絵を描くことをずっと続けていると、あるとき常人には見えないものが突然見えてくることがあるような気がする。単に視覚とか視力だけの問題ではなく、頭の中の解釈の閾や想像力がだんだん上がってくるみたいな。デザインにも(たぶん言葉にも)そういう瞬間はあるのではないか。頭の視力、心の視力をもっと上げていきたい。
(2009年8月13日追記)
>>熊田千佳慕展(2009)の公式サイト(asahi.com内)
……8月13日永眠との知らせが……。ご冥福をお祈りします。

