第五七五回無声映画鑑賞会

門前仲町に無声映画鑑賞会を観に行った。友だちのおもとちゃんに教えてもらって、行くのはこれが2回目。
無声映画は、音のない映像に弁士さんがナレーションや出演者の台詞を声色を使い分けて音声をつけていく映画で、トーキーが主流になる1930年代以前の作品が多い。
活弁界で第一人者の女性弁士・澤登翠さんを中心に、無声映画を残そうと願う人々によって、毎月東京のあちこちで上映会が開かれているのだという(主催のマツダ映画社のサイトはこちら)。
この日の第五七五回無声映画鑑賞会の演目は、親が原因で離ればなれになった幼い兄弟の悲話「己が罪作兵衛」(昭和5年)と、小津安二郎監督の初期作品「出来ごころ」(昭和8年)の二本立て。
若い男の弁士さんがフィルム切れのトラブルを話術でうまくつないだ「作兵衛」も良かったが、その後の寅さんの原型のような人情話の「出来ごころ」がとても面白かった。一人で何役もの声色を使い分ける澤登さんの話芸も素晴らしい。
下町に住む貧乏な父子と長屋住まいのご近所の、あたたかい助け合いの心(舞台は奇しくも映画館のすぐ近く、小津安二郎のふるさとでもある深川)。どこに進むか予想もつかない映画としての展開は、未熟さとは別の愛すべき“ゆるさ”にあふれていた。
昔の人の優しさとドジっぷり、慎み深さなど、現代に暮らすわれわれが忘れてしまったかもしれない心が、映画とそれを伝える話芸の中に生きている。忘れそうになったらまた観に来たいなと思う。
人間的にもデザイン的にも、最終目標としてはこの頃の映画みたいにゆる〜くありたいと、最近のぼくは思っているのだ。

