福山〜宮島(1)和田誠の絵本の仕事

はじめに—“僕らが旅に出る理由”

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 THE BOOMの2005年ツアー“Field of Songs”をお台場・潮風公園で観て、面白かったのでもう一度違う場所で観てみたいと思ったのが、そもそものはじまり。今回のツアーは、KiiiiiiiのLakin’がツアーのメインビジュアルとグッズのイラストを全面的に担当していることもあって、いつにもましてTHE BOOMに対して親しみがわいていて、稚内でもサハリンでもその気になれば飛んでいきたい気分だった。そんな中で宮島を選んだのは、翌日の宮沢和史弾き語りライブ「寄り道」と併せて、三連休で行きやすいスケジュールだったのと、もうひとつは、雑誌「Pooka」で紹介されていたふくやま美術館「和田誠の絵本の仕事」展の、ちょうどはじまりの時期だったから。できれば尾道や広島などゆっくり立ち寄りたい気分だったが、THE BOOMと宮沢和史、ふたつのライブのスケジュールを考えると、あれもこれもと欲張るのはむずかしく、結局初日の広島行きの新幹線を途中下車してちょっとだけ福山に立ち寄ることにした。
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福山〜宮島(2)厳島神社千畳閣〜宮沢和史「寄り道」

2005/07/18
厳島神社千畳閣

 自然・歴史・神様(!)と音楽のコラボレーションが素晴らしかった、17日のTHE BOOM宮島ライブ@包ヶ浦自然公園。その翌日、夜に開かれる宮沢和史弾き語りライブ「寄り道」が始まるまでの間、宮島で観光した。そのときの様子は、言葉よりも写真で。

 

宮島の土産物街はのどかで、観光地によくある押しの強さがほとんど感じられなかった。

宮島名物の大杓子。裏通りに入ると、京都にも似た町屋が続く通りへ。

 厳島神社や、近くにある大願寺というお寺のとても居心地のいい縁側でしばらく時を過ごした。まだライブまでに時間があったので、会場の千畳閣に開演前に行ってみることにした。一般の人が参拝できる時間帯だったので、入口で参拝料を払って中へ。いま思えば、ライブ前のこの時間に来ることができてほんとうにラッキーだった。

 中に一歩足を踏み入れると、一瞬で気持ちいい空気に身体が包まれるのを感じた。建物の周囲は窓が一切なく、全方向に開かれている。南側はうっそうと茂った森、北側は瀬戸内海。風が心地よい。板張りの床はやさしい感触で、あちこちで横になって寝転がっている人がいる。究極の癒し空間。豊臣秀吉が戦没兵士の魂を癒すために作った、というエピソードにも納得させられる。

 天井に目を向けると、梁には宮島名物の杓子や船のオール、筆文字や絵が書かれた板が無数に並んでいる。その並びはまるでコラージュ・アートのようだ。きっと平和や航海の安全、家族や仲間の幸せを願う人々が残していったのだろう。いろんな人々の願いを聞き入れ、戦に破れた戦士たちの魂を癒す空間。ぼくは千畳閣のような存在になりたいと思った。ここにはやさしさだけでなく、厳しさからくる強さ、孤高の精神みたいなものが同居していて、それが多くの人々を引きつけているように感じられた。

 その数時間後に始まった宮沢和史の弾き語りライブを観て、「あ、千畳閣が一人いる」。アコースティック・ギターと歌と詩の朗読、楽しさの中にも強い意志を感じるMC。その繰り返しから見えてくる、やさしさと強さと孤高の精神。この人に近付くのはたやすいことではないな、と思った。

ティナリウェン 1st Live in Japan フライヤー

2005/7/15

AD/D=下山ワタル
CL=PROMAX
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気づいたらここにいた。

 きょうは朝から、ドラマー林立夫さんの写真撮影があった。10月26日にリリースされる『Non Vintage〜林立夫セレクション』(くわしくはこちら)のブックレット用。曇り空だったけど、とてもいい雰囲気の中で撮影ができた。撮影終了後、林さん、カメラマンの桑畑さん、撮影に立ち会ったライターの川村さんと四人でしばらくいろんなことを話した。それぞれのキャリアについての話題になったとき、林さんが「ミュージシャンを目指そうなんて思ったことは一度もなかった」と言っていて、それが強く印象に残った。別に最初からミュージシャンになりたかったわけではなく、たまたま細野さんや鈴木茂さん、ユーミンやその他の仲間たちと同じ場所にいただけだった、と。

 今回一緒に仕事をした桑畑さんも写真を撮り始めたのは30以降で、それまではカメラマンになろうなんて夢にも思っていなかったそうだ。桑畑さんと同い年のぼくも、やはりデザインを始めたのは30過ぎてMacを購入してから。自分が将来デザイナーになっているなんて20代の頃は想像だにしてなかった。幼い頃からずっとドラムに親しんできた林さんと自分を単純に比べることはできないけど、林さんの言わんとするところには深く共感できた。

 素晴らしい仲間たちと同じ場所・時間を共有する経験を重ねていくうち、気づいたらぼくはここにいてデザイナーになっていた。時々そんなふうに思うことがある。別にデザイナーじゃなくてもよかったのかもしれない、とも思う。ただ、ぼくにとってデザインは自分を100%表現できて、しかもリラックスしてこなせる仕事。たぶんこういうのを“天職”というのだろう。桑畑さんが「音楽が好きだった自分にとって、カメラはやっと手に入れた楽器のようなもの」と言っていた。ぼくもデザインなら誰とでもセッションできるような気がする。

Rei Harakami@LIQUIDROOM ebisu

 7月9日(土)、雨が降りしきる中、リキッドルーム恵比寿のレイ・ハラカミ・ワンマンライブ(ゲスト有り)へ。天候にもかかわらず当日券は完売、前も後ろも動きが取れないほどの超満員。オープニングの「終りの季節」(インスト+映像のみ)に続いてハラカミ氏登場。2004年の渋谷O-Eastでのイベント(いま思えば矢野顕子つながりのテイ・トウワの直前に出演)で、初めて生で彼のライブを見て、自らマイクを握る「絶賛盛り下げ中です!」みたいなハラカミ節炸裂のMCもそのとき知って衝撃を受けた。イベントでは長く演奏して4〜5曲がせいぜいだから、今回のようにたくさんの曲をまとめて聴けるのはめったになくとても喜ばしいことだった。そんな晴れの舞台でも例のMCは変わらず(笑)。

 曲は、最新作の『lust』以外では『opa*q』『red curb』からがほとんど。記憶が正しければ1st『UNREST』の曲はなかった気がする。クラブ・ミュージックとして機能させることを放棄してやりたいことだけを追求した『red curb』が、多くのミュージシャンに支持され、のちに彼の代表作になったことを思えば、この選択は正しかったと思う(聴きたい気持ちも正直あったけど)。そしてあまり耳を通してなかったこのアルバムを、もう一度ちゃんと聴いてみたいと思った。

 途中から京都仲間でハラカミが「兄貴!」と呼ぶ、ダムタイプ高谷史郎氏が映像で加わり何曲か演奏した。難解ではないシンプルな映像で、時々音楽とものすごくリンクしてきて心地よかった。(『lust』のsuzukiskiの写真の雰囲気にも通じる)港湾の風景がずっと流れているときの曲が、個人的にはこの日のベストだった。レイ・ハラカミの奏でる音楽には、哀愁、郷愁など「愁」という文字が表わす感情(こんなとき表意文字は便利)をかきたてられることがある。たとえるなら、クラフトワークの「コンピュータ・ラヴ」とか。踊らずに少し下を向いて、音の響きを受け止めるようにして聴いていた観客が多かったのもうなずけた。

 ライブとしては曲順・構成に留意するとさらにマジックが生まれるような気がした。今回みたいな長時間の一人ライブは今後も続けていってほしい。オールナイトではなかったので電車がなくなる前にライブは終了したが、あんな美しい音だったら何曲でも何時間でもアンコールしたいものだ。

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