高いので特集により時々買うデザイン雑誌『アイデア』の5月号は、「大特集:日本のタイポグラフィ1995-2005」。55人のデザイナーによるエディトリアル・デザインの仕事(書籍を中心に、雑誌、宣伝物など)が一冊まるごと使って紹介されている。鈴木成一、立花文穂、葛西薫、祖父江慎、中島英樹、服部一成、菊地信義、仲條正義など、日本を代表するデザイナー・装幀家たちが名を連ねている。紹介された作品の多くに使用書体がクレジットされているのがとても役に立つ。
「1995-2005」という区切りがまた絶妙。この十年は、組版が写植オンリーからDTPへと移行していく変わり目の時期だったから。特集の巻末にまとめられたデザイナーの略歴とコメントの中で、アジール・デザインの佐藤直樹さんが、この十年の面白い動きとしてThe Designers Republic(DR)と丸明オールドを上げていたのが印象的だった。
佐藤さんのコメントをヒントにして、日本でのタイポグラフィの十年を大ざっぱに前半後半に分けてみた。前半五年は、Macが普及してDTPの地盤が作られていく一方、コンピュータなしではありえない新しい発想によるタイポグラフィやグラフィックのムーブメントが巻き起こった時期(DRやtomatoとフォロワーたち、日英のフォントブーム…)。そして後半五年は、欣喜堂“和字書体シリーズ”や片岡朗さんの“丸明オールド”(エイワン)など、明治期の書体の再発見により作られた新しいデジタルフォント(写植ではない)が次々と登場した時期。まあ、音楽にたとえれば、前半がヒップホップ/テクノで、後半がレアグルーヴか。
前半に対応しているデザイナーは、中島英樹、佐藤直樹、稲葉英樹(樹×3)、後半に対応しているのが、鈴木成一、有山達也、浅葉克己……(活躍の時期とは無関係)。鈴木さんは、写植オンリーに近い装幀の世界に積極的にDTPを取り入れてきた人。2002年に出た宮沢和史/中川正子の写真集『旅の響き』でもいち早く丸明オールドを全面的に使っていた。そして写植の象徴みたいな存在だった浅葉さんまでもが、丸明オールドをひっさげてデジタルの世界へ…。ようやくデジタルでも写植に比肩するような(というよりデジタルならではの)組版表現が可能になってきた、というのが2005年現在の状況だろう。
ここ数カ月、フォントや組版にとても興味を持っていろいろ調べていく中で、今まで自分のやってきたことは何だったんだと思えてしまうようなことに何度も遭遇してしまった(ま、常にその連続なんだけど……今回は特に)。一時期はWebデザインの世界に行ってみようとか半ば本気で考えていたけど、それはそれとして今は紙の世界でまだまだやれることがあるし、やっていくべきだと強く感じている。